倒産処理手続における債権者平等原則の意味を、単に形式的・比例的平等ととらえるのではなく債権者の事情に応じた実質的(衡平的)な平等を図ることの必要性を研究する本課題においては、不法行為債権を他の一般債権と比べ優先的にこれを扱えないものかというテーマを具体例として採り上げている。そのうえで本年度の研究成果としては、前年度に引き続き、現行のわが国の倒産処理手続における不法行為債権の優先性の例証として破産免責手続における悪意の不法行為債権を非免責債務とする破産法第366条ノ12第2号に着目し、この立法趣旨につき当時の立法関係資料等からその制定の経緯等をある程度解明したうえで、同条の母法国である米国の連邦倒産法523条(a)(6)を巡る裁判例や学説の動向をもあわせて研究を進め、この点に関する研究については一定の成果をあげることができ論説として公表させていただいた。この研究で得られた成果から、不法行為債権については倒産処理手続においては優先的にこれを処遇する政策的必要性が見いだせたことから、このような趣旨が、広く倒産処理手続全般(法人の倒産事件を含む)にまで敷衍できないものか、という点を今後も継続的に研究いくものである。
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