今年度は、介護保険における地域格差の問題についての考察を主に行った。介護保険が施行されて3年が経ち、現在の公的介護の状況に関する種々の著作も増えてきている状況にある。その中で、地域格差に関しては、かなりの格差の存在することが指摘されているようである。これは保険料の地域格差の問題もあるが、それ以外にも、地方自治体の取り組み姿勢の問題等も存在すること、そして介護移住(公的介護の進んだ地域への移住)を考慮すべきであると薦めている著作さえ出てきている。このように地域格差問題が過激な提言さえ生んでいることにも刺激を受け、地域格差問題に関して考察可能なモデルを構成し、分析を進めている現況である。 モデルの数理的構成等は、海外の諸文献のモデルも参考にし、若年世代と老年世代が存在する二地域モデルを考えている。未だ、数理的モデルが細部まで完成したとはいえないが、次のような特徴をもっていると言えよう。動学モデルであるが、均衡分析ではなく、その動学過程における、老年世代、若年世代の厚生について分析したいと考えていること、介護(もしくは広く社会福祉)における地域格差が移住を生じさせるという構成であることである。このような中で中央政府の役割を考察することも大きな問題であり、中央政府が役割を期待される可能性が大きい。(まだ計算結果は出ていないので、最終結果ではない) 未だ、モデルが少し大きすぎるので、分析可能とするために改変中であり、また、大きいままでシミュレーションが行われるべきかも考慮中である。
|