研究概要 |
・「医療保険制度改正が入院期間に与えた影響について」 1997年9月の健康保険組合加入者本人の自己負担率改定において,入院需要にどのような影響を及ぼすかという点について統計的手法を用いた検証をおこなった,全体的として,自己負担率改定によって平均入院日数の削減効果はそれほど大きいものではないが,類似する疾病に関しては同程度の入院治療が行われ,かつ日数も減少傾向にあるという意味での効率的な治療が行われるようになったと解釈できる患者層が確認された. ・「老人の自己負担変化と診療点数合計の分布の変化について」 本稿では,老人医療の自己負担方式の改正により,医療サービス供給側の診療行為に変更が生じたかという点について,診療機関別のレセプトデータを用いて分析を行った.特に疾病ごとの改正前後の点数分布の動向を見ることで実際にどのような診療(どの程度の水準,どのような内容)が行われ,それが改正によってどのように影響を受けたのか,という点を中心としてみた.その結果,自己負担率が実質的に上昇する低点数層に対しては,特定の疾病においては,実際に医療サービス水準の上昇が観測され,診療内容を変更しない場合でも,レセプト数の増加などが観測されることが多く,低価格診療が拡大したことを裏付けている.それに対して高点数層への診療を見ると,点数水準の引き下げが生じているケースが多い.
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