本年度は、昨年度までの実績(最近の企業統合に関する理論的発展についての整理、ならびに実際の企業統合に対する競走政策当局の審査の手続きおよび問題点についての整理)を踏まえて、実証的検討を行うことを目標とし、日本の上場企業に関する財務諸表データの収集と整理をおこなった。 一方、平成15年2月7日〜13日まで、カナダのビクトリア市とバンクーバー市を訪れ、カナダにおける有機食品産業の再編動向についての調査を行った。この調査は、日本の成熟した金融業あるいは製造業に置ける合併事例を対象とした前述の研究とは異なり、有機食品という比較的新しく需要が急増している産業における企業統合を対象とするものである。大手食品メーカーが有機食品メーカーの買収を進めているといわれており、ブランド名はそのままにした買収は、市場の略奪競争の様相を呈している。今回の渡航で十分なデータが得られたとは言いがたいが、実際、従来の一般品と有機食品の価格差は縮小傾向にあることがわかった。 今後は、こうした成熟産業と新規産業の特性に配慮し、それぞれの産業における合併の経済的背景について一層の研究を行う予定である。
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