都市経済学では、企業や住民が近接して立地しあうことにより正の外部経済を生ずる集積経済が重要であり、この集積経済が起こる理由として、都市内での活性的な情報フローの存在に注目が集まっている。即ち、都市では、近接的に立地しあうことで対面交流による自発的な情報フローが頻繁に発生する。重要なアイデアは様々なバックグランドを有する異質な人材と情報交換することで得られることが多く、このアイデアが都市における知識の蓄積に必須となる。これまで、この情報フローの側面は概念的には捉えられてきたが、理論的・実証的な取組みは成功していなかった。しかし、マクロ経済学に内生的経済成長の理論が登場し、経済成長における知的資本の役割について理論的フレームワークが整い始めた。一方で、情報フローを測定することが困難なこともあって、信頼性の高い実証分析は殆ど見当たらないのが実状である。本研究は、様々な情報通信メディアのデータを活用することによって都市における情報フローの実証分析を行い、内生的経済成長の理論のフレームワークと結び付けながら、近年の日本経済の主役である情報通信技術(IT)の進展と都市の経済成長との関係を、デジタルデバイド等「影」の側面も念頭に置きつつ、理論及び実証の双方から精緻に分析したものである。 本研究は平成13〜14年度の2年間実施した。初年度は、理論面において都市経済学及び経済成長論の最新の文献を参考にしつつ、理論モデルの構築に取り組んだ。また、既存の地域経済データや交通・通信の地域間交流データを整理し、各種情報通信メディアのデータと併せてIT時代の都市経済分析に資するデータベースを整備した。次年度は、各種情報通信データと地域の経済成長に関するパネルデータによる計量分析を実施し、情報通信の高度化がヒューマンキャピタル(知的資本)の蓄積や知的なスピルオーバーの誘発を通じて、一人当たりGDPの上昇に寄与し、経済成長をもたらすことを実証的に確認した。これらの研究成果は、書籍や専門論文、一般向けコラムなどを通じて、徐々に公表を進めているところである。
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