研究概要 |
平成13年度は割引キャツシュフロー法とそれを発展させたリアルオプション法が日本の実務界でどの程度浸透しているかを調査し,その実際的な応用の方向性を探った.同時に現在の学術的な先端研究の内容を調査し,理論面での発展の可能性を調査・分析した.これらの結果を踏まえたうえで,今年度は以下のような研究を行った. 1.13年度に開始した原子力発電所の評価プロジェクトのケーススタディーに加えて,今年度は新たに不動産事業開発の評価プロジェクトを開始した.特に都市部での大型オフイス用ビルディングの評価プロジェクトを中心に,利害関係者,すなわち土地の所有者,不動産開発会社,建設会社等の間で交わされる契約に注目し,その評価を行った.その結果,関係者間で交わされる契約には将来の不確実性に依存する多くの状態依存契約が結ばれていることがわかり,実物財に関する投資活動を分析するリアルオプション契約にとどまらず,財務的なオプション契約においても多段階意思決定理論による分析の重要性を明らかにすることができた. 2.リアルオプションの手法は金融市場における投資戦略の策定,特に長期的な運用が要請される場合に有効であるため,昨年度の研究に引き続いて投資対象となる資産クラスへの配分比率を研究するアセット・アロケーション問題についての分析を行った.特に金利変動リスクに注目して,長期的な視点による年金基金の資金運用についての研究を行った. 3.リアルオプションなど多期間の意思決定問題は実務上の利用については障害が大きいが,ビジネススクールでの授業を通じて通常の文科系学部卒業生にも利用できるように,表計算ソフトなどを使った意思決定ツールの作成を試みた.結果として作成したプログラムは,多くの実務家からも高い評価を受けることができ,書籍にまとめることを強く求められたため,出版を目標に引き続き開発を続けることにした.
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