平成14年7月に「A.ユア『イギリスの綿製造業』における綿製造業の歴史観について」(『富山商船高等専門学校研究集録』第35号)を発表し、その中で、ユアがイギリスの綿製造業の発展過程をどのようにとらえたのか、発展の要因は何ととらえていたのかを明らかにした。手作業に対する工場システムの技術的優位を指摘するのみならず、様々な機械を発明した人々が高く評価されていた。ジョン・ケイ、ジェイムズ・ハーグリーブズ、リチャード・アークライト、サムエル・クロンプトン、ジェイムズ・ワットらが優れた発明家として評価されているが、中でもアークライトの評価がとくに高い。機械による生産は従来の生産方法とは異なったものであったが、多くの労働者たちがこの新しい生産方法に適応できずにいた。ユアのアークライトに対する高い評価は、機械の開発と導入だけでなく、労務管理をも含めた新しい総合的な経営方法を導入したことに対して与えられていた。 さらに、平成14年12月に、九州経済学会第52回大会(熊本学園大学)において「A.ユアにおける工場システムと労働」というテーマで報告をした。科研費支給期間でのユア研究の総括という意味合いもあり、経営組織、労務管理、等を含めた幅広い観点から、ユアの経営学説史を包括的に報告した。ユアは、工場の労働条件を極めてよいととらえていたこと、外国との激しい価格競争の中で低価格が不可欠であること、複雑な経営管理を担う者として雇われ経営者に期待を寄せていた、ことなどを指摘した。
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