研究概要 |
本研究は,わが国の外部監査における内部統制評定がどのように行われているのか,を把握することを目的としている。2002年1月に公表された,新監査基準では,国際標準に準じた内部統制の枠組みが採用されているが,その結果,今後わが国においても,内部統制の評定に関する監査人の責任は大幅に大きなものとなることが予想される。そのような状況下において,本研究では,監査人と被監査会社の双方に対する意識調査を実施することを主として,わが国の外部監査における内部統制評定の現状と課題を明らかにしようとするものである。 本研究では,まず,調査に先立って,改訂監査基準においても重視されているリスク・アプローチとそれに基づく内部統制評定に関する監査手続について,諸外国における実態調査等の成果を中心として文献考察を行った。続いて,文献考察の結果を踏まえて作成した質問票に基づいて,被監査会社の企業担当者,ならびに,外部監査に従事する公認会計士に対するアンケート調査を,それぞれ,2001年8月と12月に実施した。企業側に対するアンケート調査は,『月刊監査研究』の論文としてすでに公表済みである。また,公認会計士に対するアンケートについては,ワーキング・ペーパーにまとめて,公認会計士ならびに監査論研究者各位に配布するとともに,改めて公認会計士を対象とする面接調査を実施している。なお,公認会計士に対するアンケート結果については,現在,雑誌論文に投稿中である。 以上のような研究により,暫定的な結果ではあるが,わが国の外部監査における内部統制評定は,リスク・アプローチを前提とした外部監査を実施するには不十分なものであり,今後,大幅な拡充が必要であることが明らかとなった。今後は,かかる課題を諸外国の状況と比較しながら,さらに具体的な拡充すべき手続等について識別していくとともに,実証的な仮説検定によって,より厳密な結果を示していきたい。
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