研究概要 |
私は,数年前,組合せ論的可換代数の基本的な概念である「Stanley-Reisenr環」を一般化して,「squarefree加群」を定義した.この概念は,当該分野の道具の一つとして定着しつつある.squarefree加群の有界な導来圏には,3つの「双対性」が存在し,3次対称群の3つの互換の如く作用している.この現象は,Koszul双対性(特に,Bernstein-Gel'fand-Gel'fand対応)と関連している.この研究成果は,Journal of the Mathematical Society of Japanへの掲載が決定している"Derived Category of Squarefree Modules and Local Cohomology with Monomial Ideal Support"にまとめた.(この論文の第一稿は,平成12年度に投稿したが,レフェリーの助言もあり,平成13年度に全面的に改定し,結果を大幅に強めた.また,14年度にも若干の改良を行った.この意味で,この論文は13-14年度の成果でもある.) Stanley-Reisener環が,対応する単体的複体の位相幾何学的性質を様々に反映しているのに対し,その一般化であるsquarefree加群の幾何学的な意味は,暫くはっきりしなかったが,平成14年度の研究で,(n変数多項式環上の)squarefree加群から,(n-1)次元閉球体上の層が構成でき,自然な(スキーム論における"Proj"と類似の)理論が展開できることが分かった.この文脈では,位相幾何学のポアンカレ・ヴェルディエ双対性と,可換代数の局所双対性が等価となる.この研究成果は,投稿中のプレプリント"Stanley-Reisner rings, sheaves, and Poincare-Verdier duality"にまとめた.
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