研究概要 |
研究実施計画に従って,下記の研究成果を得ました. 1.射影法の定義自体に関して,通常用いる2つの構成法が本質的に同じであることを示し,成果を論文として発表しました. 2.タイリングを無限グラフとみなしたときにその上の離散スペクトル幾何を考えることができます.射影法により得られた準周期タイリングに対して,まずはいくつかの具体例におけるラプラシアンに付随した量を重み付き有限オートマトンを用いて求めることを計画していました.しかしながら,研究当初の予想に反して,重み付き有限オートマトンを用いるだけでは不充分であることが分かりました.有限オートマトンに分岐被覆という生成原理を繰り返すことで,準結晶構造が再構成できることは証明されました.この生成原理は1次元のときには記号力学系,エルゴード理論におけるinterval exchangeという概念と密接に関係しています.成果を論文としてまとめ発表予定しています. 3.ルート束を用いた射影法がFoldingという操作に対応していることを示しました.成果を論文として発表しました. 4.因子写像を調べることにより,準周期性は双対な構成により得られたタイリング力学系がエルゴード的であることと特徴づけられるといった結果を得て,成果を論文として発表しました.さらに,タイリング力学系の上のflowの軌道閉包による分割が局所同型類による分割と一致すること,射影法によって得られる準周期タイリングの同型類の個数が非可算であること,準周期タイリングの同型類の決定という結果を得ています.この結果の一部は既に口頭発表により公表し,成果は論文としてまとめ発表予定しています.
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