研究概要 |
1)凸双対法が数理フソイナンスにおける最適化問題を解くのに強力であること:最適性を動的計画原理を用いずに特徴付けられること、終末時点における確率変数の形は明示的にわかること、などが明解になった。 2)マルコフ的かつ線形な構造が資産価格過程のダイナミクスに入っているときは、最適化問題を解くのに必要な偏微分方程式が常微分方程式の組み合わせに還元されるため、次元に依らない数値解法が可能であること。ファイナンスにおけるポートフォリオ最適化などは非常に高次元なモデルを想定したいので、これは好ましい。 3)リスクの動的測度を用いたヘッジを行う問題などでは、目的関数の形、また制約が複雑になるため、最適戦略が明示的に計算できるような例はほとんど存在しない。したがって、数値解法、近似解法が重要になると考えられる。マリアバン解析やその技術を用いた漸近展開法などが有望な解法の開発に役立つかもしれない。 4)制約のある市場下で優複製問題を解くのに、株式保有量(デルタ)の制約の取り扱いは凸双対法による接近が大変効果的である。しかし、株式保有量の変化(ガンマ)の制約の取り扱いは、凸双対法による接近は困難であると思われる。(Soner-Touzi両博士による論文では主問題への動的計画法による接近が図られている。) 5)非完備市場に於ける指数型効用関数を用いた派生証券ヘッジ問題や、べき乗型効用関数を用いた最適投資問題の最適解がドリフト項に2次の増大度を持つような後ろ向き確率微分方程式(Backward Stochastic Differential Equation,以下BSDEと略記)の解を用いて表現できる。特に動的計画原理を用いず、従ってモデルにマルコフ的構造を仮定する必要がない。
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