研究概要 |
力学系の不変集合である特異集合を定量的に記述する道具としてのフラクタル次元(ハウスドルフ次元やパッキング次元,レイニー次元など)の解析のために,測度の次元を解析することを研究の目的にした.本研究により,一次元のある種の力学系の不変集合のフラクタル次元を測度の次元を通して解析することにり,フラクタル次元の値を完全に求めることができた.その結果,ハウスドルフ次元とパッキング次元,レイニー次元が一致するために力学系が満たすべき条件を与えることができた. 一次元の力学系の列に対して不変になる集合が,カントール型の特異集合になる場合次のような結果を得られた.力学系の列の縮小率が一定であれば,不変集合のハウスドルフ次元,ボックス次元,パッキング次元,レイニー次元および容量次元は,すべて一致する.力学系の列の縮小率の対数の平均について,その下極限は不変集合のハウスドルフ次元,下ボックス次元および容量次元に一致し,上極限は不変集合の上ボックス次元パッキング次元,レイニー次元に一致する.従ってこの平均が収束しない場合,不変集合のハウスドルフ次元とパッキング次元は異なる値を持つ.力学系の不変測度は,縮小率の対数の平均が収束すれば,次元がその値に一致するルベーグ測度に絶対連続である.これらの結果を論文「Fractal Dimensions of Some Invariant Sets」(投稿中)および「Absolute Continuity of Invariant Measures」(投稿準備中)にまとめた.また,測度の次元に関する本研究の成果を,報告書「力学系と測度の次元」にまとめた.
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