研究概要 |
今年度の研究実績は以下の通りである. コンパクトハウスドルフ空間上の最大値ノルムに関する連続線形汎関数は,ある符号付き測度に関する積分の形で表される(リースの表現定理).これは確率論において重要な応用を持つ基本定理である.福島正俊は1999年にこれに類似した結果として,準正則ディリクレ形式が与えられた時,ディリクレノルムに関する連続線形汎関数が(一般化された)符号付きスムーズ測度の積分で表されるための必要十分条件を与えた.これによりディリクレ形式とそのスムーズ測度に関する多くの新しい結果が従う. 本研究者はこの結果を更に一般化し,適当な条件を満たすノルム付き関数空間に対して福島の結果と同様の主張が成立することを証明した.この設定を満足する関数空間の具体例としては,準正則ディリクレ形式の定義域空間のほか,可分バナッハ空間上のグラディエント作用素から定まる可積分指数P(>1)の1階のソボレフ空間や,それとL^P空間を実補間した空間などが挙げられる.この結果を用いて,抽象ウィーナー空間上で定義されるBV関数について,その一般化されたグラディエントに対応するベクトル値測度の滑らかさに関して従来の結果を改良した.またBV関数についての解析を進め,実補間の理論を援用することによりBV関数全体の空間と非整数階ソボレフ空間との関係を確立した.これにより非整数階ソボレフ空間に関連する幾つかの研究を統合的な立場から捉える道が開かれたといえる. 以上の結果について論文を執筆し,現在投稿中である.
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