研究概要 |
この期間は半線型波動方程式の解の時刻無限大での挙動を研究する非線型散乱理論を研究課題とした。もう一つの課題は、非線型弾性体方程式を代表例とする準線形波動方程式系の初期値問題の時間大域解の存在の研究であった。以下、個別に研究業績の概要を述べる。 1.半線型波動方程式の散乱理論。扱った問題は、J.GinibreとG.Veloにより1987年の論文中で出題されたもので、通常のエネルギーと共形エネルギーが自由解について定義できる最も広い初期値の空間として自然に決まる重み付きソボレフ空間上で波動作用素の漸近完全性を示せという問題であった。私はストリッカーツ型評価と共形エネルギーを融合させることがこの問題の解決に不可欠であることに気がついて、そのためにLi-Zhou型と呼ばれる不等式を一般的な形に拡張して用いることにより上述の問題を解くことに成功した。また、GinibreとVeloの論文中で扱えなかった空間5,6次元の場合に対しても解答を与えることができた。 2.準線型波動方程式系の初期値問題の時間大域解の存在。初期境界値問題にも応用ができる手法の開発を念頭におき、S.Klainermanによる基本的定理やK.Yokoyamaの優れた仕事に対して基本解の評価に依らず、ローレンツブーストを用いない新しい証明を与えた。
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