研究概要 |
本年度は「なんてん」を用いていくつかの領域(Orion, Monocles, Carina)において、C^<18>O, HCO^+, H^<13>CO+(J=1-0)分子スペクトルでの高密度分子雲探査を行い、星形成の可能性が高い分子雲をいくつか検出した。また、パイプ星雲内に存在する小規模星団形成領域、B59、に対する野辺山45m望遠鏡のH^<13>CO^+観測から、原始星形成段階以前の10太陽質量程度の超高密度分子雲ガス塊を検出した。そのスペクトルが極めて強いことから、おうし座で発見したMC27の様な、原始星コア形成直前に非常に近いガス塊が存在している可能性が極めて高く、早期のサブミリ波による観測が必要不可欠である。既に形成されている原始星はこのガス塊を取り囲むように存在しており、このことは、同じ分子雲コアの中でも必ずしも星が全て同時期に形成されるわけではないことを示している。また、フランスのP. Andre氏(Service d'Astrophysique, CEA/DSM/DAPNIA)、MPIの立原研吾氏との共同研究で、IRAM 30m鏡を用いたサブミリ波117素子ボロメータMAMBO2による、おうし座、へびつかい座、B59領域の高密度ガス塊方向のサブミリ波連続波観測を始めた。この観測により、MC27に近い段階の候補天体を2,3見つけることが出来た。これらの天体については、高励起の分子スペクトルによる観測を予定している。 もともと予定されていた「なんてん」の主鏡交換作業が来年度に再延期になったため、200GHz帯の受信器を同望遠鏡に設置することは出来なかった。しかし、230GHzの受信器については、実験室での開発は終了し、大気観測用の受信器として常時稼働するようになった。主鏡交換作業終了後、直ちに搭載することは可能になった。このような状況のため、高密度分子雲の高励起分子線スペクトルによる観測は出来なかったが、上で述べたように、45m鏡、MAMBO2などを用いた観測により、星形成直前の分子ガス塊の性質を詳しく調べることが可能となった。
|