研究概要 |
超伝導受信機に用いるSIS接合ミキサーの性能は,SIS接合ミキサー周辺に配置されるフィルターやSSB受信機を構成するのに欠くことのできない90度ハイブリッドカプラーの性能等の高周波コンポーネントの周波数特性に左右される. 本研究では,SIS接合ミキサーの製造技術の確立の一環として,「広帯域なSIS接合ミキサー」を設計するために,回路理論に基づく行列を用いた解析手法を考案・開発し,実際に広帯域な高周波コンポーネントを製作して評価を行なった. まず,ローパス・フィルターの設計では,IF帯域(通過帯域)で最良な平坦特性が得られるようにバタワース型のフィルターを採用し,回路理論的な設計手法に基いたSIS接合ミキサーのインピーダンスの変更に柔軟に対応できる設計手法を提案した.実際にその設計手法に基づいてローパス・フィルターのスケールモデルを製作し,電磁界解析の結果通りの動作を確認した.このフィルターは,通過帯域でのリプルはゼロであり,インダクター部やキャパシター部の長さを変えることで,ローパス・フィルタとして動作する周波数領域を任意に変えることが可能である. また,90度ハイブリッドカプラーの設計では,上記のローパス・フィルターの設計と同様な回路理論的な設計手法を用い,E分岐とH分岐のどちらの3dBブランチラインカプラに対しても柔軟に対応できることを確認した.この手法に従えば,「RF用の導波管タイプの90度ハイブリッドカプラー」と「IF用のストリップ線路タイプの90度ハイブリッドカプラー」のどちらでも,基本設計(電磁界シミュレータにかける前の設計)が可能である.この手法を用いて,84GHzから116GHzの周波数範囲で用いることができる100GHz帯用の広帯域の3dBブランチラインカプラを開発した.(このカプラは,電波天文学の分野の国際的な大規模プロジェクトである「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)」計画の仕様を満足する.)
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