研究概要 |
前年度までの研究を更に発展させ、星間空間の環境との相互作用を考慮した星間ガスの熱的収支の定量的な計算を行う手法を構築した。具体的には、最も主要な加熱源である星間紫外光の塵粒子を媒介としての光電加熱や、主要な冷却源である炭素、酸素原子の微細構造準位間遷移の際の輻射を取り入れ、煩雑な熱・化学過程を計算するモジュールと共に動作する流体計算法を開発した。この手法を用いて、さまざまな密度・温度の現実的なガスの動的進化について定量的な解析を詳細に行った。まず先駆けとして、国立天文台データ解析センター研究員小山氏と共著で、衝撃波によって圧縮された約1万度の低密度ガスが熱的不安定性により分裂して、乱流状の速度分散を持つ微小分子雲の集団が形成されることを示した。これにより、星間乱流の起源・持続メカニズムが熱不安定性に起因しているということを世界で初めて示した。この内容は米国天文学会誌The Astrophysical Journal Lettersにて題目"An Origin of Supersonic Motions in Interstellar Clouds"(ApJ, Vo.564,L97-L100,2002)として発表された。さらに今年度中には2度、国際会議において講演を行い、国内外の専門の研究者による評価を得た。さらに熱的不安定性が重要になる星間ガスの進化のシミュレーションの際には、熱伝導を正しく取り入れ、熱伝導係数で決定される低温ガスの外層部分を適切に空間解像することが不可欠であり、この条件を満たしていない(我々以外の諸外国の研究者により遂行された)計算結果には重大な問題を含んでいることを示した。この内容は、米国天文学会誌"The Astrophysical Journal Letters"に題目"The Field Condition : A New Constraint of Spatial Resolution in Simulations of Thermally Unstable Hydrodynamics"として現在、投稿中である。
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