研究概要 |
本課題で鍵となるのはチェレンコフ望遠鏡複数台を用いたステレオ観測によるマッピングである。平成14年度はオーストラリアに設置される複数望遠鏡計画の2台目の観測準備作業及び3台目の建設を進めた。2台目の望遠鏡では、反射鏡の製造工程を業者と共に改良。さらに現地での調整システムを大幅に改善した結果、1台目との比較で、集光能力を約2倍向上させ、調整時間を約5分の1に短縮することができた。これらの結果、10メートル口径クラスのチェレンコフ望遠鏡としては世界に先駆けてステレオ観測を始めることができた。ステレオ観測ではガンマ線到来方向を良い精度でイベントごとに決定できる。現在は既知のガンマ線天体を用いてその精度を調べている。これらの開発を、視野内に広がった天体の解析に応用していく予定である。銀河面は背景雑音の校正データとして収集データの中に含まれており、他波長のこれまでの観測結果から興味深い場所の優先度等を理論の研究者と共に検討した。 一方、1号機望遠鏡の観測データ解析も進めた。銀河近くのパルサー、PSR1259-63は主系列Be星と極端に偏った楕円軌道を形成しており,星風・ディスクとパルサー風の相互作用を直接に調べるプローブとして独特な意義を持っている。解析の結果、高エネルギーガンマ線の放射に対して有意義な上限値を得ることができた。Be星流束からの放射一般について新しく開発した計算モデルは、銀河に多く含まれる大質量星連星系にも応用可能である。銀河円盤の放射への寄与を検討している。この研究は雑誌論文として現在投稿中である。
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