研究概要 |
アインシュタインの一般相対性理論におけるブラックホールについては,通常の熱力学に非常に類似した法則が成り立つ.ブラックホール熱力学は,ブラックホールにホーキング輻射と呼ばれる量子的な熱輻射があることによっても裏付けられており、通常の熱力学と同様、ブラックホール熱力学の背後にも統計力学が存在し、それは時空のミクロな物理と関連していると期待されている.そのミクロな物理を記述する候補として,超弦理論における近年の発展から,時空中のある超曲面上でのみで定義される漸近的対称性が注目されている.そこで,ブラックホール上で正則にふるまう漸近的対称性について解析し,その対称群の構造を調べた.さらに、この対称群がブラックホールの局所的な性質を不変に保つことを示すことにより、この漸近的対称性がブラックホール熱力学と関連している可能性を指摘した.これらの研究は、まず、電気的に中性で球対称なブラックホールについて行い、その内容を日本物理学会で発表すると共に、学術論文としてPhysical Review Dに掲載されており、この論文はすでに海外の研究者によって引用されている. また、この漸近的対称性がブラックホール熱力学と関連した統計力学的性質であるためには、帯電している非球対称な一般的なブラックホールについても同様の漸近的対称性が存在しなければならない.そこで、アインシュタインの一般相対論における一般的なブラックホールについて上記と同様の解析を行うことにより、この漸近的対称性が一般的なブラックホールに普遍的な性質であることを明らかにした.この内容については、日本物理学会で発表を行い、現在学術論文を準備中である.
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