今年度、高密度に光励起された電子・正孔系における電子相関の効果を光スペクトルの観点か明らかにしてきた。 まず、強い電子相関が物質の物理的性質に起きた影響を与える事を光学応答の観点から明らかにした。この分野では、電子と正孔の4体以上の電子相関をいかにして取り込むかがここ十数年来大問題となっていた。私は、電子と正孔に関する4体のベーテ・サルペータ方程式を導出し、数値解を求めることにより低密度における励起子的な発光から、高密度におけるプラズマ発光までの全密度領域をカバーする基礎理論を確立した。この理論は、近年応用面で重要視されているワイドバンドギャップを持つ半導体に関する実験結果を見事に説明することができ、新しい短波長発光素子の開発に非常に役立つ指導原理を与える理論であると考えられている。 次に可視光によって励起された高密度電子・正孔系における赤外及びTHz領域における吸収スペクトルを計算した。この波長領域は、物理・工学の両方で重要な波長領域である。私はこの研究において、波動関数くりこみ効果によって、半導体中のキャリアの有効質量が大きく変化すること・キャリア濃度が薄くなるにつれて量子ゆらぎの効果の為に「繰り込まれたラビ振動数」が従来の理論に比べて非常に小さくなることを示した。 また、私はこれらの理論をGaNに応用して発光スペクトルのキャリア依存性と電子相関の役割を実験家との共同研究によって明らかにした。 さらに、励起子閉じ込め領域に相当する大きさのCdSe微結晶の発光スペクトルの理論計算を行い、発光強度の励起強度依存性や、電子相関が重要になる励起子モット転移等を実験的・理論的な観点から議論した。
|