研究概要 |
(1)分散形ファブリ・ペロー干渉計による高速ブリユアン散乱装置における検出系の改善;高分解能CCDカメラ(Apogee, AP32E-2,2184x1472画素)と現有の単一モードレーザー(DPSS532)とソリッドエタロン(反射率98.5%)を使って高分解能の高速ブリユアン散乱装置を構成した。このモデルは1画素の面が6.8μm×6.8μmと小さいため高分解能のスペクトルを得ることができる。 (2)この高速ブリユアン散乱装置を使って様々な1価アルコール系のブリユアンスペクトルを測定した。アルキル基の長さと分子量を変化させることによって、音速度と吸収係数が比例して変化することがわかった。低温では音響フオノンと結合した緩和過程の影響ため、ブロードなセントラルピークが見えた。粘弾性理論を用いてブリユアンスペクトルを解析して音響フオノンと結合した緩和過程の緩和時間の温度依存性と活性化エネルギーを得た。その結果、液体相について得られた緩和時間と誘電率によるβ緩和過程の時間が一致することを確認した。これは音響フオノンとβ緩和過程の結合が高温で強いことを意味する。この結果は1価アルコール系におけるβ緩和過程が構造緩和過程と密接な関連があることを間接的に示す。 (3)エタノールにおける低温のスペクトルは一つの緩和過程(β緩和過程)を仮定して解析することは出来ない。この結果から、β緩和過程より速い過程がβ緩和過程と一緒に音響フオノンと結合することがわかる。得られた活性化エネルギーを考慮すると、速い過程の起源は分子の低振幅秤動モードのような分子内的自由度である可能性が高い。 (4)オリゴマー及び水酸基をメチル基で置換したアルコール系のダイナミクスを調べた。PPG(Polypropylene glycol)の場合は音速度と吸収係数が分子量と関係が無いことが分かる。これらの結果は、PPGの水素結合ネットワークの長さが、ブリユアン散乱で見ている局所的スケールよりもはるかに長いことを意味している。PPGの末端基のひとつがメチル基に置換された場合は、音響的性質が分子鎖の長さにより大きく変化する。
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