研究概要 |
平成14年度には,前年度に設置した地磁気繰り返し磁気点で,複数回にわたって繰り返し測量を実施することができた。秋田焼山では,火口湖を巡って計12点の測点において,平成13年11月2日の第1回測量に続き,平成14年6月16日,7月18日,8月26日,10月12日の計5回繰り返し測量を行った。磁気点は噴気を含む活動火口を囲むように設置し,磁気点網の直径は500m程度である。活動火口には水がたまっているが,その位置は秋田焼山山頂の北側,鬼ヶ城の西側に位置する。秋田焼山では1997年8月に中心火口の外川北東部で水蒸気爆発が起こったが,現在その位置では表面上の地熱兆候は見られない。 繰り返し測量点では,10秒サンプリングで5分間以上,オーバーハウザープロトン磁力計で全磁力を測定した。ただし,2002年8月の測量では5秒サンプリング,2002年10月の測量では3秒サンプリングで測定した。地磁気日変化の影響を取り除くための参照観測点として南西に数10km離れた国土地理院の磁気点・水沢の全磁力値を用いた。このデータは1分値で提供されているので,繰り返し磁気点のデータを1分値平均に変換して単純差をとった。 地磁気変化測定の結果,秋田焼山周辺では50nT程度に及ぶ大きな年周変化あるように見える。参照点の水沢観測点自体の年周変化はごく小さいと考えられることをもとにすると,10,11月頃の全磁力値は,2001年,2002年とも同等であるが,年周変化の正異常が6,7月,負異常が8月にあるようである。このような7,8月のこの急激な変化の原因はおそらく熱変化による地表付近の岩石磁化の変化を捉えているのは確かであろう。しかし,磁場変化のデータの取得は高々一年であり,今観測されているこの変化が年周変化であるのか,地熱的なイベントであるのか判断するのは時期尚早であるかもしれない。この種の研究は少なくとも数年間のデータを蓄積して議論する必要がありそうである。科学研究費の交付は今年度で終わりであるが,必要な機材を手に入れることができたため,今後もこの研究を続け,地磁気変化による活火山の地熱モニタリングを続けることができる。
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