研究概要 |
本研究課題では,阿蘇火山をテストフィールドとして,土壌ガス(二酸化炭素)フラックスの分布と自然電位分布の関係を明らかにすることが主たる目的であった. 1.このため,面的測定が容易なチャンバー方式のガスフラックス計を備品として購入した. 2.阿蘇カルデラの周縁部および中央火口丘の一部で,これまで不足していた自然電位分布の測定を補充した.中央火口丘では中岳火口を中心とする高電位異常の他に,湯ノ谷温泉・地獄温泉の両地域では局所的な高電位異常が存在することが明らかになった. 3.カルデラ内で二酸化炭素フラックス計による測定を行ったところ,上記温泉地域では,顕著に二酸化炭素フラックスが高いことが明らかになった.最もフラックスの高かったのは湯ノ谷温泉の噴気口近傍で,800g/m2/day程度の値が計測された.これらのことから,自然電位異常(高電位部分)は熱水の上昇に伴う流動電位である可能性が高い.ただし,高フラックスの領域はそれほど広くなく,むしろ噴気口の周辺に限られていた.阿蘇火山は,近年いくつかの火山で報告されているように山体の広い範囲からじわじわと二酸化炭素が放出されるタイプではないようである. 4.3次元の電場計算コードを開発した.これにより,観測された自然電位マップから等価電流源の強さと位置を推定したところ,中岳火口直下の深さ約1〜2km程度の位置に10A程度の電流源が推定された. 5.中央火口丘のいくつかの地点から岩石をサンプリングし,ζ電位の測定を行った.その結果,高岳・杵島岳周辺の岩石はζ電位が通常とは逆符号の正の値をとることがわかった.この結果は,今後自然電位モデリングを進める上で極めて重要な情報となる.
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