研究概要 |
本年度は当初の予定通り次の研究を行った。まず第1にマントル遷移層から下部マントルにかけて、水がどのように分配されているのかを明らかにするため、olivineとその高圧相のwadsleyite, ringwooditeさらにはその分解生成物のperovskite及びferropericlase間の水の分配を決定した。その結果、olivine, wadsleyite, ringwoodite, perovskite中の水の分配比は4:20:10:1程度であると決定された。このことはマントル遷移層は上部マントル及び下部マントルよりも水を保持しやすく、地球内部の大量の水の貯蔵庫であることを示唆する結果となった。本研究の1部はChen et al.(2002)として既に出版され、更なる結果も投稿予定である。第2にマントル遷移層から下部マントルにかけてCO_2がどの状態で存在し、またolivineの高圧分解相転移、すなわち660km地震学的不連続面にどのような影響を及ぼしているかを明らかにした。この結果、相転移境界はCO_2の影響により僅かながら高圧側に移動する結果となり、以前の結果と合わせると、上部マントルから下部マントルにかけてのCO_2の影響が明らかにされた。この結果に関しても投稿予定である。更に第3に珪酸塩マグマへの水の影響、特に含水ソリダスは明確に存在するのかという疑問を解決するための実験をdiopside-H_2O系、さらにはforsterite-diopside-H_2O系で行った。高圧下になればなるほど含水ソリダスの決定が怪しくなる様子が観察され、このことは高圧下で含水珪酸塩メルトといわゆる珪酸塩成分を溶かし込んだ水に富んだ流体相との組成が近づき、区別が困難になる結果となった。この結果に関しても執筆予定である。上記の研究以外にも共同研究としていくつかの研究に携わり、その投稿論文は研究発表欄に示してある。
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