研究概要 |
本研究の研究実施計画にしたがって研究を遂行した結果、以下の成果が得られた。 ・水田における長期熱収支時空間分布の推定 植生地の代表的形態の一つである、水田を対象にして地表面熱収支の長期・広域分布の推定を行った。その結果、植生の成長が著しい期間においても、衛星熱赤外放射温度、地上気象データ、地表面熱収支モデルの三者を組み合わせることによって、適切な陸面過程パラメータおよび地表面熱収支の推定を行うことができた。特に注目すべき点は約1ヵ月ほどの解析期間内において、わずか4回の衛星赤外データを元に、地表面熱収支の定量的な時空間分布に成功したことである。 具体的には、衛星データにはNOAA/AVHRRの熱赤外画像、地上気象データにはアメダス等、地表熱収支モデルには、Matsushima and Kondo(1995)の線型熱収支モデルに基づいて本研究で開発された、植生地にも対応する二層モデルを用いた。対象領域は宮城県の平地にある水田で対象領域の総面積は約400km^2である。解析期間は1994年6月の1ヵ月間で、葉面積指数が0.1から2まで著しく上昇する期間である。 同時に測定された水田での傾度法による地表面熱フラックス検証データとの比較では、日平均値について、二乗平均誤差が正味放射量で37Wm^<-2>,顕熱で13Wm^<-2>,潜熱で28Wm^<-2>だった。また、月平均値の計算値と観測値との比較では、正味放射量が+5W^<-2>m、顕熱・潜熱では+4Wm^<-2>の差があった。正味放射量の推定誤差が大きくなってたのは、主に日射量の推定誤差が大きかったことによるもので、この誤差が顕熱・潜熱の大きさに比例して配分されたと解釈される。また、空間分布については、顕熱が6〜20Wm^<-2>、潜熱は60〜90Wm^<-2>(いづれも月平均値)であった。この分布の原因は主に風速によることが分かった。
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