研究概要 |
2次元減衰性乱流では,渦度場とパッシブスカラー場の発展方程式は極めて似た形を持つ.そこで,2次元乱流中の渦度場の動力学を研究することは,2次元乱流中のパッシブスカラー場の動力学の研究に大きく貢献すると考えられる.そこで,2次元乱流,特に,地球の大気や海洋の大規模運動を近似的に記述するモデル方程式として知られている,Charney-Hasegawa-Mima方程式に従う減衰性乱流について研究を行った. 申請者らの過去の研究において,CHM乱流中のスペクトルは自己相似性を保ちながら時間発展していく事が知られており,このような発展をする理由として,秩序渦の役割について考察が成されていた.本年度は,別の観点からこのような自己相似性の出現する理由について考察を行った. スペクトルや伝達関数が正常な次元解析的スケーリングによってスケールできると仮定し,スペクトルの発展方程式を,自己相似な関数の関係式に逓減した.この関係式の成立条件から,以下の結果が得られた. 1)流体が非粘性の場合には,Batchelor(1969)によって予測された相似則が得られる.ただし,この場合にはエネルギーの低波数側への輸送しか記述することができない. 2)粘性流体を考慮した場合には,p=2の超粘性の場合のときにのみ,Batchelor(1969)の相似則が得られる. さらに上記の解析をNavier-Stokes系に適用した場合,1)Batchelor(1969)の相似則が,Navier-Stokes方程式系ではなぜ成り立たないのかを説明する事ができる. 2)Chasnov(1997)によって示された,新たなエネルギー,エンストロフィーの減衰則を説明することができる. 上記の成果はJournal of Fluid Mechanicsへ投稿準備中である.
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