研究概要 |
地球規模の気候交動と密接に関連する深層西岸境界流の通り道には20〜50cm/千年という驚異的な堆積速度を示す「ドリフト堆積物」がある.本研究は深層流のような弱い流れによる細粒堆積物の堆積過程を調べることを目的としている. 平成14年度は細粒堆積物の堆積実験を重点的に行なった.実験は大阪大学大学院理学研究科に既存の循環式小型水路で,秒速5〜20cmの比較的弱い流れを作用させ,堆積厚さを昨年度本申請により作製した砂面計で測定した.扱う材料は,モデル化に便利なように,球形のガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ(株)製J-800,38μm通過97%)を使用した. まず,静水中での堆積実験(濃度0.42g/l,2.0g/l)では,ガラスビーズを投入・撹拌した直後から急激に堆積し,徐々に堆積速度が小さくなり一定の値に達した後,わずかに堆積厚さが減少する現象が見られた.一方向流下の実験では,濃度を一定(0.77g/l)にして流速を毎秒5.6,9.0,12.6,20.0cmと変化させ,その下での堆積厚さを測定した.すべてのケースでガラスビーズの堆積が見られ,この濃度では従来考えられている堆積/輸送境界よりも大きな流速でも堆積することがわかった.温度変化が少なく,堆積量の多い実験開始直後の約40分間の堆積厚推移カーブを比較すると,流速9.0,12.0cm/sでは,40分間の間でも実験開始直後ほど堆積速度が大きく,徐々に小さ<なるという上に凸のカーブを描いたが,流速5.6,20.0cm/sの時には堆積量も少な<,堆積厚変化が直線的であった.流速20.0cm/sでは流れの水平方向の速度成分に阻害されて堆積物の沈降速度が遅くなっていると思われる.逆に,流速5.6cm/sで堆積量が少なかったのは流速が小さすぎて,水路下のポンプやパイプなどに堆積物が留まってしまったためではないか.と考えられる.
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