研究概要 |
昨年度までに、石川県白峰村桑島化石壁(手取層群桑島層)から7種類の巻貝類化石を確認した。 Viviparus onogoensis Kobayashi and Suzuki,1937(タニシ類) Micromelania? katoensis Suzuki,1943(カワニナ類) Physidae gen. et sp. indet.,species A(サカマキガイ類) Physidae gen. et sp. indet.,species B(サカマキガイ類) Planorbidae gen. et sp. indet.,(ヒラマキガイ類) Pupilloidea fam. gen. et sp. indet.(サナギガイ類) 所属不明1種 これら7種類はいずれも泥質細粒砂岩およびシルト質泥岩から産出するが、その産出頻度には明瞭な傾向が認められた。タニシ類とカワニナ類は粗粒な泥質細粒砂岩に含まれ、より細粒になるにつれ、所属不明種を伴う傾向にある。これら3種類の産出個体数は、他の4種類の数倍にもおよぶ。サカマキガイ類2種類とヒラマキガイ類はシルト質泥岩より産出し、稀に陸棲のサナギガイを伴う。貝化石の産出頻度が最も少ないシルト質泥岩では、サカマキガイ類1種類のみがごく稀に産出する。 桑島化石壁の砂泥互層を構成する層厚1mほどの泥岩層で、これら7種類の産出頻度を調べたところ、下位より「サカマキガイ類1種類+サナギガイ類」「サカマキガイ類2種類+ヒラマキガイ類」「タニシ類+カワニナ類+所属不明種」「サカマキガイ類」の4つの産出様式が認められた。このような産出様式の変化は、貝が生息した環境の変化、すなわち水深に大きく反映されたものと考えられる。このような微細な環境の変化の違いは、堆積物の粒度などからでは判定不能であり、微小な巻貝類が堆積環境の詳細な指標となりうることを示している。 本年度の調査でさらに、上記の貝類のうち、サナギガイ類をのぞく6種類が、手取層群大黒谷層(岐阜県荘川村)からも産出することが明らかになった。今後、これらの貝類化石の産出様式の詳細な解析を行なうことで、桑島化石壁との堆積環境の比較が可能になるものと思われる。
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