研究概要 |
本研究はダブル・トリプルスパイク法を用いて鉄隕石のPb同位体比を精密に測定することにより、様々な鉄隕石の母天体が形成されたタイムスケールを明らかにする事を最終的な目的としている。本研究ではまずダブル・トリプルスパイクの実験に必要な実験器具や試薬・エミッターを作成し、10ナノグラム程度の鉛を0.01%以下の内部精度で測定できるようにした。次にダブル・トリプルスパイクの中でもオーバースパイクに対する誤差拡大率の小さい204-207Pbダブルスパイクを作成し、その同位体比をNBS982標準試薬を使って求めた。さらに求められたスパイクの同位体組成が正確であるかを確認するために標準試薬NBS981の同位体比をダブルスパイク法を用いて求めた。このようにして求められたNBS981の値は以下の通りである。206Pb/204Pb=16.9419(23;2σ_p),207Pb/204Pb=15.4987(32),208Pb/204Pb=36.7295(95).この値はGaler(1997)によって求められた16.9405,15.4963,36.7219と誤差範囲内で一致しており、ダブルスパイクを使った測定とデータ解析が正確に行われていることを示している。 本研究では上記のスパイクを用いていくつかの鉄隕石やトロイライトインクルージョンの分析を行った(一部は進行中)。その中でも特に鉛含有量が高いNantan隕石中のトロイライトについては段階的な分解を行い、それぞれの同位体比を測定した。その結果、同位体比が最も低いフラクションでもCanyon Diablo中のトロイライトよりも高い同位体比を示すことが明らかになった。今後、さらに年代学的な理解を深めるためにはCanyon Diabloトロイライトの同位体比をダブルスパイク法を用いて求める必要がある。
|