研究概要 |
前年度で発生に成功した1,4-ジリチオ-2,3,5,6-テトラフェニル-1,4-ジゲルマベンゼンの単離を目的とし、トルエンから再結晶させたところジゲルマベンゼンそのものの単離はできなかったが、ジゲルマベンゼン同士が二量化した化合物1,2,5,6-テトラゲルマトリシクロ[2.2.2^<1,6>.2^<2,5>]オクタ-3,7,9,11-テトラエンジアニオン(1)が生成し、その特異な構造をX線結晶構造解析により明らかにした。1は溶媒分離イオン対を形成し、トリシクロ体および溶媒和されたリチウムそれぞれがカラム構造をとり、電気的に空孔を二個有しているため今後の物理的性質(導電性や磁化率等)の解明により、新規機能性材料としての応用が大いに期待できる化合物である。また、ジゲルマベンゼンの単離と溶液中における挙動を明らかにするため、置換基であるフェニル基のパラ位にトリメチルシリル基を導入して同様の反応を検討したところ、溶液中における安定性が格段に向上し、室温10分間は観測に耐えられる試料作成に成功した。1,4-ジゲルマベンゼンの単離は今後の課題であるが、必ず克服できるものと確信する。さらに、1,4-ジゲルマベンゼンを含めた1,4-ジメタラベンゼンの理論計算(B3LYP/6-31+G(d))を行ったところ、炭素の系で良く知られている1,4-ジリチオベンゼンは1,4-位にリチウムが共有結合した化学種が最安定であるのに対し、含ケイ素および含ゲルマニウムの1,4-ジメタラベンゼンは二個のリチウムがベンゼン環の上下に架橋した構造が最安定であるという興味深い結果が得られた。これは高周期14族元素にして初めて発現する性質であり、これまでのベンゼン異性体に新たな構造を提案できる画期的なものである。
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