研究概要 |
C, H, N, O等の軽元素のみで構成される有機ラジカル強磁性体の常圧下における転移温度はバルクタイプで1.5K,弱強磁性タイプで36Kが最高である。本研究の目標は、静水加圧による人為的構造制御と言う物理的アプローチによって、転移温度の積極的なコントロールを成功させることにある。研究代表者はこのような研究を本研究課題の申請前から行っていたが、本研究課題がこれまでの研究と異なる点は、ほんの一部の専門家にしか出来なかったダイアモンドアンビルセル(DAC)を用いた超高圧下磁気測定に挑戦することによって、測定圧力領域を従来の2GPaから10GPaにまで拡大し、有機強磁性体の潜在的可能性を解明したことである。主要な結果は以下の三つである。 (1)<純有機バルク弦磁性体> 加圧によって強磁性転移温度が上昇する純有機バルク強磁性体を実験的に始めて見出し、強磁性が最終的に消失する圧力領域まで、磁性と構造の相関を明らかにした。本研究は有機磁性体においては初めての超高圧力物性研究として認められただけでなく、有機強磁性体の人為的構造性御の可能性の限界を実験的に示したものとして評価されている。 (2)<純有機弱強磁性体> 36Kの転移温度を持つ純有機弱強磁性体の転移温度を静水加圧によって、これまで未踏であった液体窒素温度領域にまで上昇させるに成功した。未発表であるが、加圧下における構造解析実験も既に終えており、磁性と構造の相関についても明らかにしつつある。 (3)<装置開発> 市販のSQUID磁束計を利用する実験環境で、1GPa以上での高圧下磁気測定はこれまで行なわれていなかったが、申請者はメーカーと共同でSQUID磁束計用の超小型DACを開発し、超高圧下における磁気測定技術を大きく発展させることに貢献した。
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