研究概要 |
昨年度は、磁性を有する金属ポルフィリンとC_<60>およびC_<70>とからなる共晶化合物を合成し、それら新規共晶化合物の詳細な結晶構造解析及び磁化率の測定を行った。特にCo(tbp)とC_<60>とからなる新規共晶化合物Co(tbp)C_<60>では、室温におけるX線構造解析を行うことに成功した。これは、フラーレン分子と共有結合を有さない共晶化合物のシリーズの中では、世界で初めての成功例である。これは、立体的にかさ高いtbpが、フラーレン分子を6方向から押さえ、加えて、Co(tbp)とC_<60>との間の極めて短い距離のために、C_<60>とCo(tbp)との間に大きな分子間相互作用が働き、室温においてもC_<60>の自由回転を完全に止めたものと思われる。 今年度は、昨年度に引き続いて、金属ポルフィリンとC_<60>およびC_<70>との共晶化合物の合成を試みた。特に、いくつかの中心金属を用いた場合、C_<70>とも良質な共晶化合物単結晶を得ることに成功し、それらの単結晶構造解析を行った。一昨年我々は、Cu(oep),Ag(oep)などとC_<60>との共晶化合物から、anti型と呼ばれるフラーレンとの安定ポルフィリンコンフォメーションを提案したが、この立体配座がC_<70>では適用されていないことが分かった。具体的に言うと、C_<60>ではanti型を取ることによって金属ポルフィリンとC_<60>との間には強い相互作用が発生するが、C_<70>では、anti型ポルフィリンはsyn型へと転じ、ポルフィリン同士のface-to-face相互作用によって安定化されていることが分かった。この時、C_<70>同士には強い長周期的なorderingが生じるため、C_<70>の分子長軸を揃えるように配列されることが分かった。 これらの結果をふまえ、今後はC_<72>以上の高次フラーレンの構造解析および金属内包フラーレンの構造決定などを行ってゆきたい。
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