研究概要 |
ジベンゾ-3m-クラウン-m (m=6,7,8)とアルカリ金属イオン (Na^+,K^+,Rb^+,Cs^+)との1:1錯体について,種々の極性溶媒中,25℃における安定度定数K_<ML>を,精密電気伝導度測定により決定した。いずれのクラウンエーテルの場合も,ドナー性の低いニトロメタン中で決定されたK_<ML>の値はNa^+>K^+>Rb^+>Cs^+の順にサイズの大きい金属イオンほど小さくなっており,他の極性溶媒(アセトニトリル,炭酸プロピレン,メタノール,水,ジメチルスルホキシド)中で見られる選択性とは大きく異なることを見いだした。これより,金属イオンとクラウンエーテルとの真の親和性は主として静電的な相互作用に支配されており,他の溶媒中でしばしば観測される一見クラウンエーテルの空孔と金属イオンとのサイズ適合性に支配されているように見える選択性は溶質-溶媒相互作用が原因であることを明らかにした。ニトロメタン中では,DB18C6→DB21C7→DB24C8の順に空孔サイズ・エーテル酸素原子数が増し,構造が柔軟になるほど,Na^+への選択性が高まることがわかった。また,各溶媒へのクラウンエーテルの溶解度を測定することにより,クラウンエーテルの異種溶媒間移行活量係数(^<sl>γ^<sl>)を決定した。これらの定数とアルカリ金属イオンの^<sl>γ^<sl>の文献値を用いて,錯イオンの^<sl>γ^<sl>も算出した。得られた諸定数に基づいて,各溶質の溶媒和特性を明らかにし,各溶媒中における錯体の安定性・選択性に及ぼす溶媒和の寄与を定量的に説明した。
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