研究概要 |
RecAとDinIの相互作用の系については,transferred NOE法というNMRの手法を用いることで,RecA単体とRecA-DinI複合体の各々について単鎖DNAとの相互作用の解析を行った.その結果,RecAはDinIとの相互作用の有無にかかわらず,単鎖DNAと結合する活性を保持しており,RecAに結合している単鎖DNAのコンフォメーションもほぼ同一であることが判明した.DinIはRecAとLexAなどの蛋白質との相互作用を阻害してSOS反応を終結させると考えられているが,本研究の結果によって,DinIはRecAからDNAを遊離させて不活化させるのではなく,むしろRecAとLexA等との相互作用を競合的に阻害している可能性が強く示唆された. Mre11については,プロテアーゼ限定分解によるドメイン構造解析で同定されたC末端側約200残基の領域について,大腸菌内での大量発現系を構築し,精製条件を確立した.この領域はMre11ホモログの中で真核生物にのみ保存されており,減数分裂時のDNA相同組換えにおけるクロマチン構造変化に重要な領域である.単離されたこのドメインについて,NMRおよび蛍光分光法を用いて機能解析を行った.この結果,このC末端側ドメインはそれ自身で単鎖および二重鎖DNAと結合する活性を持っていることが示された.また,このドメインを大腸菌中で発現させ,in vivoでNMR測定を行う試みにも成功した.このアプローチを用いることでMre11のC末端領域と他の因子との相互作用をin vivoで,かつアミノ酸残基以上の分解能で観測できる可能性が示された. また,上記の機能解析と平行して高分子量蛋白質(および蛋白質複合体)のNMR解析のための方法論的研究も行い,効率的な蛋白質主鎖NMRシグナル帰属法を確立し発表した.
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