研究概要 |
本研究課題では,環境依存的に形質を変える表現型多型という性質を顕著に示すシロアリとアブラムシを材料に,カースト分化などのメカニズムを探ることを目的として研究を進めている. 本年度は,社会性昆虫であるシロアリ類の分業や,カースト分化に伴う生理状態の転換機構に関して,コロニーの状況に応じた制御機構の解明を目指し,オオシロアリとネバダオオシロアリを用いて研究を進めた.特に,兵隊や繁殖カーストで特異的に発現する遺伝子の検索を行い,発生プログラムのどのような制御がこのような表現型を作り出すのかを解明することを目標とした.いくつかの遺伝子の単離や発生組織形態学的な知識がえられ、目標に向かい着実な成果をあげている.現在、兵隊特異的遺伝子の単離に成功しており,その機能の解析を行っている.兵隊分化に伴う形態学的および組織学的な基礎の確立に成功し,特に顕著に発達する大顎の伸長機構に現在取り組んでいる.また,winglessやEcRなど,いくつかの発生や変態に関する遺伝子のシロアリホモログも単離している.また,有翅虫(繁殖カースト)の分化における複眼の形成など,シロアリの社会行動を構築する他のカースト分化やそれらの相互作用についても,生態学的な知見とも合わせて研究を開始した。これらの研究成果は幾つかの論文にまとめ,国際誌に発表した.また,8月に行われた国際社会性昆虫学会議では,シンポジウムを企画し,その中で成果の報告を行った. アブラムシに関しては,卵における発生と単為生殖胚の発生の比較を詳細に観察し,特に共生バクテリアの垂直感染プロセスが,多型個体間で異なることを示した.成果は国際誌に発表することができた.
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