研究概要 |
ヒタキ科ウグイス亜科の4種、オオヨシキリ、ウチヤマセンニュウ、イイジマムシクイ、ウグイスについて、繁殖個体群のサンプルを用いて分子生物学的手法の検討をおこなった。 ミトコンドリアDNA調節領域では、Tarrのプライマーが、オオヨシキリとウチヤマセンニュウで利用できることがわかった。オオヨシキリは韓国の個体群と日本の個体群を分析し、5%の個体の例外を除いて、両個体群を区別することができた。そして、日本の個体群はフィリピンで主に越冬していることが示唆された。本成果を国際鳥学会2002年大会(北京)で発表した。孤島に離散分布するウチヤマセンニュウでは、九州南部の島々、九州北部の島々、伊豆諸島のサンプルを調べたところ、九州南部と北部は一致し、伊豆諸島のみ0.1〜0.4%の違いが見られた。ただ、伊豆諸島の5個体のうち、1個体は九州地方と同じハプロタイプだったので、調節領域の地域差は頻度差であることがわかった。 マイクロサテライト(ms) DNAの分析では、6つのニシセンダイムシクイのプライマーを2種で試した結果、属の異なるウチヤマセンニュウでは利用できなかったが、同属のイイジマムシクイでは、POCC5,6,8の3つの遺伝子座で対立遺伝子多型が検出された。オオヨシキリでは同種から単離された5つの遺伝子座で多型が検出され、大阪と韓国の個体群に遺伝子頻度の明確な違いが認められた。Z染色体上の遺伝子座よりも常染色体上の遺伝子座の方が違いが大きく、オオヨシキリでは常染色体上の遺伝子座が地域差を検出するのにより適していることがわかった。ウグイスでは、msDNAをクローニングし、プライマーの開発をおこなった。 以上のように、地域差を検出する手法をいくつかの種で開発し、分子生物学的手法を渡りルートの研究に利用する手法に道をつくることができた。
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