研究概要 |
レタス芽生えでは、生育用液体培地のpHをpH6からpH4に低下させると、根の表皮細胞で微小管のランダム化が起きて、根毛形成が誘導される。そして、この微小管配列のランダム化は根毛形成に必須の現象である(Takahashi et al.,2003a)。平成14年度は、この微小管配列のランダム化と植物ホルモンの1つであるエチレンとの関係を調べた。 pH4でもエチレン合成阻害剤のAVGを添加すると、微小管配列のランダム化も根毛形成も阻害された。逆に、pH6でもACC添加により微小管配列のランダム化が誘導され、根毛も形成されるようになった。このことから、pH低下による根毛形成時の微小管配列のランダム化は、エチレンにより誘導されることがわかった。 そこで次に、エチレン合成の律速段階となるレタスACC合成酵素遺伝子2つ(Ls-ACS1,2)の発現を解析した(Takahashi et al.,2003b)。エチレン前駆体(ACC)添加により、Ls-ACS1,2ともにmRNA量の増大がみられたが、オーキシン添加ではLs-ACS2のみmRNA量が増大した。また、暗黒下に比べ、赤色光照射ではLs-ACS1のmRNA量が増大し、青色光照射は白色光照射と同程度にさらにLs-ACS1のmRNA量の増大がみられた。一方、LsACS2のmRNA量は光の影響を受けず、いずれの光を照射したときも暗黒下と同レベルであった。各色の光照射時に芽生えから発生するエチレン量の大小関係は、Ls-ACS1のmRNA量の増大に与える各色光の影響の大小と同じ関係であった。 以上の結果と、pH低下後、まずLs-ACS2の発現が増大し、次いでLs-ACS1の発現が増大する(平成13年度実績報告)ことを考え合わせると、「pH低下→根毛形成領域でのオーキシン濃度・オーキシン感受性の増大→Ls-ACS2によるエチレン合成→Ls-ACS1によるエチレン合成→微小管配列のランダム化→根毛形成」の流れが推測される。
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