研究課題/領域番号 |
13740477
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
動物生理・代謝
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西野 浩史 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (80332477)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2002年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2001年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 昆虫 / 神経行動学 / 擬死 / 抑制性運動ニューロン / 弦音器官 / 運動抑制 / 自己受容器 / 筋収縮 / 遅筋 / コオロギ / 神経生理学 |
研究概要 |
フタホシコオロギは前肢を拘束すると全ての肢を強く屈曲させ、3〜4分間凍り付いたように身動きひとつしなくなるいわゆる"死にまね"をおこす。死にまね中に特異的にみられる生理現象として"カタレプシー"がある。これは屈曲位置にある脛節を強制的に伸展位置まで動かすと新たに与えられた位置を保持し続ける現象で、筋肉が一定の緊張状態と柔軟性を併せ持つ状態と解釈される。本年度はこの独特の硬直姿勢をつくるのに寄与する脛節屈筋を支配する運動ニューロン群の細胞外記録を行い、その発火パターンや頻度を解析ソフト(Lab View)を用いて詳細に調べた。 その結果、死にまね中の姿勢保持に寄与する4個の遅筋タイプの興奮性運動ニューロンの発火頻度は単に静止している状態の発火頻度と違いがみられないことがわかった。両状態においてその総スパイク頻度は脛節の位置に依存して大きく変動した(脛節が伸展位置にあるほど減少する)。さらに死にまね中に特異的に抑制されるユニットを細胞内記録・染色により同定したところ、筋緊張を抑制する機能を持つ抑制性運動ニューロンであることが判明した。つまり、死にまね特有の筋緊張は興奮性運動ニューロンの活動昂進によるものではなく、抑制性運動ニューロンの抑制によりつくられることが強く示唆された。 さらにこの死にまね時特有の運動ニューロンの発火特徴を指標として死にまね誘発時の拘束刺激を受容する自己受容器の探索を行ったところ、両前肢の腿節内弦音器官の除去により死にまね特有の硬直状態が誘発されなくなることがわかった。一方、他の感覚器の除去では全く影響がみられなかった。これにより、死にまね維持への関与が示唆された腿節内弦音器官が死にまね誘発にも関与するという決定的な証拠が得られた。 以上、死にまね行動を特徴づける運動抑制の末梢の神経機構はほぼ解明され、2年間にわたる研究目標はほぼ達成された。
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