研究概要 |
エリプソメトリーは、光を偏光素子を通して既知の完全偏光状態にした後に試料に入射し、反射や透過による偏光状態の変化を見る計測法である。特に雰囲気を選ばないことから、真空中での膜厚決定法のひとつとして用いられてきた。エリプソメトリーは従来可視域の波長で主に用いられてきたが、その波長を真空紫外域に拡張することで膜厚感度の改善が期待される。 本研究では、実験室光源である放電管により発生するHe-I(58.4nm),He-II(30.4nm)共鳴線それぞれの波長を用いたエリプソメーターの開発を行った。 偏光素子は、Mg/SiやMg/SiCなどの組み合わせを用いた反射多層膜を3回反射させて光軸が変化しないようにし、それぞれの波長と入射角毎に多層膜を作製した。He-I用多層膜として[Mg23.5nm/Si28.7nm]x15周期の多層膜を設計し、設計偏光能は0.96に対し実際に得られた偏光能は0.94であった。He-II用多層膜は、[Mg11.2nm/Si11.1nm]x15周期多層膜,[Mg29.9nm/SiC17.9nm]x6周期多層膜を用いた。この場合の設計偏光能が0.994であったのに対し、得られた偏光能は0.989であった。これらの反射多層膜を光軸が変化しないように反射するホルダーを作製し、ホルダー全体を真空中で回転させることで偏光素子とした。また光源として既存の放電管を改良し、He-IIの強度の強いホローカソードタイプのHe放電管を作製した。これらの装置はいずれも附設工場で作製した。作製した装置を既存のイオンビームスパッタ装置に組み込み、膜の成長にともなって偏光面が回転する様子を観察した。得られた結果については、現在解析中である。
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