研究概要 |
脳血管障害が微弱な血流雑音を発生することは以前から知られており,この現象を利用した脳血管障害の検出に関する研究は数多くなされている.その中で,脳血管障害が動脈瘤である場合,血流雑音の周波数スペクトル上に共振と考えられるスパイクが検出されている.本研究では,動脈瘤の第一近似として,薄肉球殻モデルを提案し,その振動モードおよび共振周波数の理論的な解析を行った.振動モードに関しては,軸対称振動を仮定し,0次,1次,2次モードの解析を行った.解析の際には,薄肉弾性球殻の周囲を満たす流体の粘性を考慮した.そして,外部流体の粘性,弾性球殻の肉厚,径,弾性率などを変化させた場合の共振周波数の変化について,数値計算によって評価を行った.その結果,外部流体の粘性を考慮しない場合と同様,球殻の共振周波数は径に対する依存性が大きく,径が大きくなるほど共振周波数が急激に低下することがわかった. 実験では,動脈瘤を人工的に作製し,その振動の様子を測定を行った.血管を模したシリコーンゴム管に,ゴム製の球殻を接着させることで動脈瘤を模擬した.管内の水流(血流の模擬)の駆動源としてはポンプを使用し,周期的な水流をゴム球殻に送り込んだ.振動の測定には,加速度型振動ピックアップを用い,水中の球殻に直接接着させた.その際,球殻の振動モードを正確にとらえるため,測定は同時に複数の部位で行った.受波信号は増幅させた後,マルチチャンネルレコーダに記録した.収録したデータをコンピュータに取り込み,高速フーリエ変換(FFT)によって周波数スペクトルを求め,各測定位置間のコヒーレンスおよび伝達関数を算出した. 理論モデルにおける解析結果との比較において,球殻の径が大きくなるにつれて共振周波数が低下する傾向は一致したが,完全な一致は得られなかった.この原因として,球殻の歪みや非線形振動の影響が考えられる.今後,さらなる検討が必要である.
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