研究概要 |
本研究において,熱遮へいコーティング(TBC)劣化の主要因と考えられるTBC/MCrAlYボンドコート界面の熱成長酸化物(TGO)の生成・成長挙動を評価した.トップコートであるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の存在によりYSZ/MCrAlY界面の酸化分圧がYSZの無いMCrAlYのみの表面に比べ低く,原子空孔の多いアルミナが生成することを突き止めた.それに伴い,Co, Ni, Crの酸化物層が生成しやすくなり,これらの酸化物が多くの気孔を含むことから,それが主因となり界面はく離を起こすことがわかった.YSZ有無材に対し1000℃,3000時間の時効処理を施した試験片においては,Co, Ni, Crの平均酸化物層厚さがYSZ無材の3μm弱からYSZ有材の約7μmと2倍以上の顕著な差が現れた.本結果は,YSZの酸素分圧をYSZの密度や組成の変化により制御できれば,TBC劣化の主要因と考えられるCo, Ni, Crの酸化物層を抑制することができ,TBC寿命向上の一助となる. また,気孔の多寡や層の緻密さは導電率や比誘電率等の電気的特性が支配的であり,これらの物性を評価可能なインピーダンス・スペクトロスコピー法を用い,TBC/MCrAlY界面の酸化挙動をモニタリングし,各種物性値と酸化挙動の関係を評価した.インピーダンス計測は,実機タービン一段動翼の表面温度を模擬し,1,000〜1,100℃の高温環境下で実施した.この際,得られたインピーダンス特性と等価回路モデルから逆問題解析を実施した.解析の結果,1000℃以上の高温環境下では,TBC劣化の等価回路に拡散の影響を考慮したWarburgインピーダンスを導入する必要があることがわかった.Warburgインピーダンスを考慮し,経年劣化によるTGOの物性値変化および厚さを評価した結果,感度の良い非破壊評価が可能となった.
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