研究概要 |
メゾスコピック材料設計に基づく単結晶ダイヤモンド薄膜の開発を目的として,分子動力学法を用いて研究を行った。CVD(Chemical Vapor Deposition)法によるダイヤモンド合成過程においては,基板への炭素原子付着の微視的メカニズムが明らかになっていないことに起因して,異種基板上への単結晶ダイヤモンド薄膜は未だ得られていない。従来,単結晶ダイヤモンド薄膜の開発に関する研究は,単結晶シリコン基板上におけるダイヤモンド核発生の微視的メカニズムを明らかにしょうというアプローチが主であった。 本研究では視点を変え,単結晶ダイヤモンド薄膜ができやすいシリコン基板の構造を探ることを目的として,まず分子動力学法を用いて単結晶ダイヤモンド基板上にシリコン薄膜を蒸着させた。次にそのシリコンからダイヤモンド基板を取り除き,それまでの界面側をシリコン基板上面として炭素薄膜を蒸着させた。ここで原子間ポテンシャルとしてTersoffポテンシャルを用いた。また計算の1ステップは1fsとした。単結晶ダイヤモンド基板は4200個の炭素原子からなり,シリコン原子の個数は500個,その後作製した炭素薄膜の炭素原子数も500個とした。すべてあわせて2361psの計算を行った。 製作された炭素薄膜の動径分布関数を調べたところ,0.15nmおよび0.25nm近傍でピークが存在した。すなわち,同薄膜の構造は単結晶ダイヤモンドに近いものであることがわかった。これは,同薄膜を作製する際用いたシリコン基板が,単結晶ダイヤモンド上に作製されたものであり,構造が単結晶ダイヤモンドと結合した際に最も適するものとなっているからだと考えられる。
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