研究概要 |
ハイドロキシアパタイトは,骨・歯の主成分であり,歯の再石灰化などに用いられてきた.また,生体親和性などを利用して,骨の代替物や修復補助材として期待されている.通常,ハイドロキシアパタイトは粒子状またはスラリーペースト状で使用されるが,ハンドリング性が悪くその使用領域が限定されてきた.そこで,ハンドリング性がよく,複合材料の強化材として効果の大きい繊維化を試みた.新しく開発した紡糸装置を用いて,スラリー法によりアパタイト繊維および不織布を作成した.作成したアパタイト繊維の焼成温度を下げることにより,繊維の持つ生体活性および吸着特性を落とさずに,繊維の強度を向上させることができた.また,作成したハイドロキシアパタイト繊維を強化材として,一般に骨の治療に使用されているポリメチルメタクリレート(PMMA)骨セメントの複合化を行なった.アパタイト繊維の含有量を変化させ,力学物性・吸着特性などに及ぼす影響を調べた.アパタイト繊維強化骨セメントは,繊維含有量が増加するにつれて引張強度・クリープ特性・破壊じん性・疲労き裂進展抵抗が向上し,同含有量の粒子強化と比べて効果が著しく大きかった.また,術中に問題となる重合発熱を低減させた.吸着特性については,重合時のMMAモノマーの生体への流出を下げる効果があり,もっとも効果的な繊維含有量があることがわかった.繊維の焼成温度による影響を調べた結果,低温で焼成した繊維のほうが高いモノマー吸着特性を示した.以上の結果より,新しく作成したハイドロキシアパタイト繊維は,複合材料の強化材として優れた特性を有することが明らかとなった.
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