研究概要 |
立形マシニングセンタの主軸に振動数約75kHz,片振幅約0.5μmの軸方向超音波振動を発する超音波振動装置を取り付け,直径20μmの超硬フラットドリル(市販品)をドリルホルダを介してこの超音波振動装置に固定し,チタン合金(Ti-6Al-4V)およびNi基超耐熱合金(インコネル718)に対して超音波振動極小径穴加工を行った.その結果,どちらの材料とも,今回行った条件下では,超音波振動の有無に関わらず加工途中でドリルが折損した.ステンレス鋼への穴加工で超音波振動の有無に関わらずドリル寿命が短いこととも関連するが,この主な原因として,ドリルの剛性不足が考えられる. 超音波振動を付加することによる一番のメリットとしては,極小径穴加工における最大の問題である切りくずの排出性を向上させることであると思われる.このことを利用し,超音波振動を付加した場合,切りくずが排出しやすくなる分,ドリルの溝部を小さくすることができる.つまり,より心厚を厚くしてドリルの剛性を高めることが可能となり,ドリル寿命を延ばすことができると思われる.ドリルの固定方法やドリル形状などの違いが有るため,単純に比較できないが,心厚を上述の市販品のものより数μm厚くしたドリルを自作し,ステンレス鋼への穴加工実験を行ったところ,市販品のドリルを用いた場合よりもドリル寿命が伸びている.しかし,心厚が厚ければ厚いほど良いというわけでもなく,切りくず排出性とドリル剛性の兼ね合いで最適な形状があると思われる.
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