研究概要 |
放電加工による絶縁性セラミックスの加工プロセスは,セラミックス表面に加工油の熱分解カーボンを主成分とした導電性の表面層が形成されることによって加工が可能となる。加工表面の抵抗が高いために,設定パルス幅よりも長い長パルス放電が周期的に発生し,この放電によって表面層が形成される。周期的な長パルス放電の発生タイミングと放電位置を調査するために,分割給電電極を製作して放電位置を計測した。この結果,放電位置に関係なく正常放電と長パルス放電とが発生することが明らかとなった。長パルス放電は,極端に長い場合には数十msとなり,一般的な放電加工で使用される数〜数百μsと比べると,電流密度が小さく効率の悪い状態である。そこで,短パルス放電と長パルス放電の中間的なパルス幅の放電で加工状態を安定させることをねらいとして,放電電圧に関係なくパルス幅を制限できる放電制御回路を付加して,加工特性を評価した。パルス制限を付加しない場合では,数μsの正常な放電と長パルス放電が繰り返し発生し,極端にDFの高い状態となり,集中放電が発生するなどして加工の再現性が低い加工であった。パルス幅200μs程度に制限した場合には,制限しない場合と同程度の加工速度で,かつ再現性の良い加工特性を得た。また,同制御回路を用いてパルス幅を10μs程度と短く制限して粉末混入加工液の適用を試みた結果,短絡が回避され,これまでの放電回路では得られなかった4μmRyの面粗さを得た。
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