研究概要 |
飲用容器や各種筐体として利用される容器状製品は,深絞り加工により製作される.成形限界としてポンチ肩部で破断に至るα破断が挙げられる.この破断を抑制するため,数工程の深絞り加工を繰り返す再絞り加工が一般的に実施されているが,コストや生産性の観点から問題点が多い.本研究ではα破断を回避するため底部の圧縮加工と深絞り加工を組み合わせた複合深絞り法を提案し,成形性を向上させる最適加工条件を導出することが目的である. 昨年度の研究成果により成形途中の任意のタイミングで底部を圧縮するピンポイント負荷がもっとも底部の薄肉化ができることが明らかとなった.そこで今年度はピンポイント負荷に的を絞って絞り比や圧縮荷重等の実験条件を種々変化させた中で,材料流動を明確にし本方法における成形特性を実験的に明らかにした. その結果として,圧縮時の荷重に対して"成形仕事量"なるパラメータを用いると底部板厚の変化が直線的に減少し,且つある値以上になると成形品を得ることが不可能となる成形可否境界を明確にすることが出来た.また,今年度本補助金にて購入させていただいた微小硬さ試験機をもちいて容器断面の硬さ測定を実施し,素材の材料がカウンターパンチ接触面から肩部へ流動する過程を明確にすることが出来た.これらの研究成果は塑性加工学会にて発表する予定であり,現在執筆準備中である. 今後の課題として材料を変化させた場合の材料流動を明確化し,本方法を実加工に適用,発展させるため,FEM等の解析を含めた検討を行っていきたい.
|