研究概要 |
ガス浸炭・ラジカル窒化処理をクロムモリブデン鋼(SCM415H)歯車に適用するための基礎的研究として,まず,ラジカル窒化処理を施した高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)について,曽田式四球試験機による焼付き試験を行った.次に,ガス浸炭後,ラジカル窒化処理を施したSCM415H円筒について,二円筒試験機による焼付き試験を行った.さらに,ガス浸炭,プラズマ浸炭およびラジカル窒化処理を施したSCM415H歯車について,動力循環式歯車試験機によるスコーリング試験を行った.これらの実験結果より,以下のことが明らかになった. (1)四球試験では,ラジカル窒化処理球同士の焼付き荷重は,未処理球同士の約2.6倍となり,ラジカル窒化処理は焼付き強さの向上に効果的である.また,回転球側のみラジカル窒化処理を施した場合の焼付き荷重は,固定球側のみラジカル窒化処理を施した場合の約3.3倍となり,試験球の組合せは極めて重要である. (2)二円筒試験では,高速側および低速側円筒にガス浸炭・ラジカル窒化処理を施した場合の焼付き荷重は,ガス浸炭処理のみ施した円筒同士の約1/2に低下し,ラジカル窒化処理による効果は認められなかった.しかしながら,ガス浸炭・ラジカル窒化処理を施した円筒とガス浸炭処理のみ施した円筒を組合せた場合の焼付き荷重は,ガス浸炭処理のみ施した円筒同士の約2.4倍に向上することが明らかになった. (3)スコーリング試験では,SCM415H歯車のスコーリング強さに及ぼすプラズマ表面改質の効果は顕著に認められ,プラズマ浸炭処理を施した場合のスコーリング限界荷重は,ガス浸炭処理を施した場合の約1.5倍となった.また,ラジカル窒化処理を施した場合のスコーリング限界荷重は,ガス浸炭処理を施した場合の約1.9倍に向上することが明らかとなった.
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