研究概要 |
テーパー構造を持つサブミリスケールの内径の流路内で液体が加熱により発泡すると,気泡は表面張力効果により,径の広がる方向へ移動し,このとき,同時に周囲の流体を径の広がる方向へ移動させるポンプ効果を示す.本研究では,高密度発熱体の効果的な冷却を行うための,この蒸気泡ポンプを内蔵した熱輸送デバイスの開発を目的とし,シリコン微細加工で製作したスロート部20μmから160μmの幅のマイクロポンプで蒸気泡駆動マイクロポンプの特性を実験的に調べ,その結果を用いて,熱輸送デバイスの試作,評価を実施した. シリコンマイクロポンプの実験では,スロート径40μm,水を作動流体とし,ポンプ部の過熱度20℃の場合,最大圧力4150Pa,最大流量147μl/minの性能が実験的に示された.また,加熱部の壁面はドライアウトした状態で,スロート付近の気液界面から冷却部付近の気液界面へ蒸気が輸送されていることが観察された. 上記知見をもとに,複数の細いマイクロチャンネルがより太いチャンネルへ連結するポンプ構造を考案し,シリコン基板にループ状の流路を造り込んだ蒸気泡駆動型熱輸送デバイスを試作した.最狭チャンネル幅は50μm,除熱部チャンネル幅は200μm,蒸気流路幅を2mmとし,作動流体に水およびエタノールを用い熱輸送特性を実験的に調べた.結果は,気液界面の分布がデバイスの性能に強く影響し,気液界面が加熱部付近に存在し,蒸気相が冷却部付近まで広がる状態が熱輸送に最適であることが判明した.また,試作デバイスでは,固体熱伝導による熱輸送の60%に相当する内部流動による熱輸送効果が確認された.
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