研究概要 |
通常流れを解析する場合,運動量・エネルギーなどの各保存式を差分法などで数値的に解く.燃焼場では計算精度の観点から小さな時間・空間スケールが必要であるため,計算時間が膨大となることが多い.このため,フィルタリングにより小さなスケールの特性をモデル化し,大きなスケールで計算を行うLESが現実的であるが,この場合にも特徴的な構造が正確に計算できる程度の精度が要求される.一方,よりミクロな視点から流れを模擬する方法に分子動力学法があるが,計算負荷が飛躍的に増加するので,実用的な場を計算することは不可能である.近年,分子や原子の集合に相当する仮想的な粒子を用いて流れを模擬する方法が提案された(メゾスケールモデル).その一つに格子ガスオートマトン法(LGA)があり,その手法の利点として,(1)支配方程式が存在せず数値誤差がない,(2)ミクロな視点から現象を記述するため境界条件の設定が容易である,(3)局所性が高く並列計算に適している,などが挙げられる.前年度は反応物と生成物の2種類の粒子を用いてLGAにより燃焼場の解析を試みた.しかし,粒子の存在の有無を整数型のBool変数を用いて記述するため,直接実数を扱うことができなかった.また粒子間の反応を確率により表したが,その物理的な解釈が問題となった. これに対し格子ポルツマン法(LBM)では,粒子の分布関数に対する発展方程式をもとに流れを模擬する.これにより実数を直接扱うことが可能になり,アレニウス型の反応を用いて燃焼場を模擬することができる.本研究では,一段の総括反応モデルを用いて,一様流中に形成される火炎をLBMにより計算した.本手法の妥当性を検討するため,燃焼速度を求めて実験結果と比較した.燃料には,メタンとプロパンの2種類を用いた.その結果,計算により得られた燃焼速度は,これまでに報告されている結果に近い値となった.今後,圧縮性を考慮するなどモデルを改善していく必要があるが,LBMにより燃焼場の数値計算が可能であることが確認できた.
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