研究概要 |
マイクログルーブ蒸発器は、μm〜mmオーダーの溝(グルーブ)を多数に彫った伝熱面に、駆動力として毛管力を利用して冷媒を供給し、その冷媒の蒸発による、発熱体の熱を除去する冷却装置である。このようなグルーブ蒸発器は,比較的低い温度で大量の熱輸送が可能となり、また伝熱面積の縮小,つまり装置自体の小型化が出來、様々な電子機器に応用可能な伝熱素子になる。 しかし、マイクログルーブ蒸発器の冷却性能は、グルーブ内へ供給される液体の液面形状(メニスカス)、毛管力の大きさ、冷媒の種類,伝熱面の材質に大きく依存する。今まで国内外の関連研究では、グルーブ内液体のメニスカスの形状における蒸発の影響を考慮せず、メニスカスを円形で仮定しており、完全開放型マイクログルーブ蒸発器の熱輸送限界の実験値が予測値より大幅に低下することが分かる。またその伝熱限界を向上させる考案は全く提案されていない。本研究は、まず、グルーブ断面内に二次元複合伝熱による液体界面蒸発過程をVOF法で数値シミュレーションし、固体面温度(又は熱流束)がメニスカスの形状に大きな影響を与えることが分かった。つまり、伝熱面(又は熱流束)が高ければ、気液界面が平坦になり、グルーブの軸方向に液体の総供給力は小さくなる。従って、実際の平均熱輸送限界が、メニスカスの形状変化を考慮しない場合より大きく下回ることが分かる。また、マイクロ毛管グルーブにおける相変化伝熱の実験研究を行った。限界熱流束に達するまでマイクログルーブの伝熱性能が沸騰伝熱より大きく促進されることが分かった。 更に、完全開放型のグルーブにおける軸方向の液面曲率変化が小さいという欠点(毛管力の低下)を克服するため、微細金網をグルーブ上に付ける。この組合せにより、冷却素子の開放性を保持すると同時に、グルーブ軸方向の毛管力の増強によって、熱と液体の輸送限界を大幅に向上することができ、実用的な応用技術と製品を開発することが期待できる。
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